ただの移動の足じゃない!
おもしろ系鉄道の旅「大井川鐵道」

2023/06/06 10:00

自分が住むエリア以外の地方の中小私鉄に、わざわざ乗りに行くのは鉄道マニアだけだと思っていませんか? 静岡県の大井川鐵道は、懐かしいSL(蒸気機関車)列車や東西の大手私鉄の旧型特急・通勤電車に新旧の電気機関車、さらに絵本の世界を再現した列車まで揃えて、子どもから大人まで、幅広い観光客の人気を集めています。

国鉄のタンク機関車、C11形が旧型客車を牽引する「SLかわね路号」は同線の看板列車。

楽しい車両が勢ぞろいするローカル私鉄

大井川鐵道は、JR東海道本線と接続する金谷駅を起点に大井川沿いを遡り、川根温泉や寸又峡温泉などの観光地を経て、山間の井川ダムまでを結んでいます。路線は金谷駅から千頭駅までの大井川本線と、千頭駅から井川駅までの井川線に分かれており、山岳区間の井川線は断面の小さなトンネルや日本唯一のアプト式でよじ登る急勾配が連続し、模型のような小さな車両で運行されています。
※注・2023年6月現在、2022年9月の台風15号による土砂災害のため、大井川本線は家山-千頭間が不通となり、バス代行輸送となっています。

大井川本線家山駅近くのお花見名所「家山の桜トンネル」や、湖を渡る鉄橋上にポツンとある井川線の秘境駅「奥大井湖上駅」など、沿線の絶景巡りもお勧めですが、この路線ならではの楽しみが、大井川本線を走る懐かしい車両たちです。

大井川鐵道では1976年に日本で初めてSLの動態保存に取り組み、現在ではC10形、C11形×2、C12形、C56形などを保有。2023年5月現在では4両が現役で、国鉄時代の旧型客車を牽引して観光列車として運行されています。古い機関車を維持するために、部品の調達や機関士・整備士の育成などの苦労を乗り越えて、のべ900万人もの乗客を乗せてきたといいます。

観光列車「ELかわね路号」を牽く1949年製のE10形電気機関車は、新車当時から大井川鐵道を走る。

さらに電気機関車も、1949年製のクラシカルな車両が現役で、SLと交替で観光列車の牽引に当たっています。普通列車も一見の価値あり。1966年に製造された近鉄南大阪線の特急型車両や、1958年製の南海電鉄の急行型電車、さらに日本のステンレス製車両黎明期の、東急電鉄7200形通勤電車(それも両運転台改造車)という、東西の有名私鉄電車が一堂に会する光景も、ここでしか見られません。

旧東急電鉄の7200形は、日本のステンレスカー黎明期の車両。1両で運行できるように両運転台に改造されている。
近鉄では花形の特急だった車両も、ここでは普通電車に使われている。
南海電鉄で活躍した急行型電車も、ここでは普通電車としてのんびり茶畑を行く。

加えてゴールデンウィークからは、2023年で10年目となる特別列車として、英国の絵本&アニメ「きかんしゃトーマス」の世界観を再現したSL列車「きかんしゃトーマス号」も運行しています。

きかんしゃトーマスの意匠を纏ったSLだけでなく、「バスのバーティー」が沿道を走行し、一部日程限定で、「2かいだてバスのバルジー」も静岡駅と新金谷駅を結びます。さらに井川線では「きかんしゃトビー号」が走るという充実ぶりです。

© 2023 Gullane (Thomas) Limited. 誰もが笑顔になる「きかんしゃトーマス」の世界を見事に再現。

 

鉄道マニアだけでなく、大人から子どもまで、誰もが笑顔になれる懐かしく、楽しい列車が走る大井川鐵道に、家族そろって“乗り鉄”をしに出かけてはいかがでしょう。

大井川鐵道公式サイト

写真提供:大井川鐵道

この記事の執筆者

横田 晃(よこた あきら)

ライター

アニメーション雑誌を皮切りに、自動車雑誌や男性誌の編集者として多くの新雑誌やヒット企画の立ち上げに参画。94 年に独立後も、芸能インタビューから政治経済まで、幅広いジャンルの企画・制作・執筆に携わる。