ただの移動の足じゃない!
おもしろ系鉄道の旅「西武 旅するレストラン「52 席の至福」」

2021/03/01 00:00

■本記事は、PSS会報誌 2021年 春号(2021.03.1発行)に掲載された内容を一部修正して掲載しています。現在の情報とは異なる場合があります■

おいしい食事をゆったりと楽しみながら眺める車窓は、満員の通勤電車から見えるいつものそれとは違う、知らない街を旅しているように映るでしょう。
新型コロナウイルス禍で遠出もままならない昨今。
身近な路線の走るレストランが、人気を呼んでいます。

4 両編成の外観も隈研吾氏のデザイン。水色をベースに、秩父地方の四季をイメージした絵柄で彩られている

非日常を楽しめる、「旅するレストラン」

単なる交通手段ではなく、乗ること自体が楽しみになる観光列車が増えています。中でも注目されたのが、東京都心部から埼玉県西部を営業エリアとする西武鉄道が2016年春から走らせている「西武 旅するレストラン52席の至福」です。

主に土・日曜日と祝日に運行されるこの列車は東京の池袋駅または西武新宿駅と埼玉県の西武秩父駅を結び、愛称の通り4両編成にわずか52席が用意された車内で、一流シェフが監修したフレンチやイタリアン、和食のコース料理を季節替わりで楽しめます。都心を11時前後に出る下りのブランチコース(税込み10,000円※)と西武秩父を18時前に出る上りのディナーコース(税込み15,000円※)があり、池袋発の同社の特急「ラビュー」なら1時間半足らずで結ぶ区間を、2時間半から3時間かけてゆったりと走ります。

※2023年4月1日以降は価格が変更になります。ブランチコース(税込み12,000円)、ディナーコース(税込み16,000円)。

2023年1月~3月までのメニューは、野田 達也シェフ、秋田 絢也シェフの2名が監修したブランチコース(写真上)、ディナーコース(写真下)

この列車の特徴は、平日の朝夕には通勤客で満員の大幹線を、非日常が楽しめるレストランにしたこと。前後して各地に登場したJR や私鉄の観光列車の多くは地方の目的地が主役で、車両や食事はその道のりの演出という位置付けですが、「52席の至福」の主役はおいしい料理を楽しむ時間と空間。新国立競技場などを手掛けた建築家の隈研吾氏による、沿線の木材などの名産品を活かした内装と、つり革につかまって眺めるのとは違って見えるいつもの車窓をスパイスとした、都会的な走るレストランなのです。

隈研吾氏による内装は、秩父地方の銘木や銘仙を使った落ち着いたもの。1号車が多目的ホール、2&4号車がダイニングルームで3号車が厨房だ

条件によっては特別に貸し切り運行も可能で、ウェディング運行や企業が主催するイベント運行なども行われています。

予約は運転日の3か月前の第二木曜日朝から西武鉄道の専用WEBサイトで受け付けていますが、ディナーコースを中心に満席の日もあるとのこと。WEBサイトに掲載される最新情報をメニューともども確認して、早めの予約をお勧めします。

 

西武 旅するレストラン 52 席の至福 WEBサイト

写真提供・西武鉄道

 

この記事の執筆者

横田 晃(よこた あきら)

ライター

アニメーション雑誌を皮切りに、自動車雑誌や男性誌の編集者として多くの新雑誌やヒット企画の立ち上げに参画。94 年に独立後も、芸能インタビューから政治経済まで、幅広いジャンルの企画・制作・執筆に携わる。