江戸の食べ方に学ぶ
健康的なダイエットのコツ【ごはん編】

2024/02/22 10:00


日本人は世界的に見ても、長生きする国民ですが、その裏には高齢者の寝たきりや介護などの様々な問題があり、平均寿命だけではなく、健康寿命を延ばすことが重要です。

筋肉を減らし、骨を弱らせてしまうような間違ったダイエットは、寝たきりリスクを高めてしまう要因になってしまいます。
例えば、近年流行した糖質制限のように炭水化物を制限するダイエットは、長期間続けることや制限しすぎてしまうと筋肉を減らし、将来の寝たきりリスクを高めることになりかねません。
(糖質制限を否定するものではありません。糖質制限を行うときは専門家と相談しながら行うことをおすすめします。)

それでは、どのような食べ方が健康的なダイエットに繋がるのでしょうか?
今回は、江戸の人々の暮らしから、健康的なダイエットにつながるご飯の食べ方のヒントをもらいましょう。


江戸の人々は、「自分のカラダは自分で守る」という考えが根付いていた!

食事と健康の関係は、約300年前の江戸時代にすでに知られていました。江戸の人々は、医療や衛生が未発達な時代に、自分のカラダを自分で守るために、「食養生(しょくようじょう)」という考え方を実践していました。
つまり、日々の体調や季節に合わせて、食べ物を選んだり、調理したり、食べ方を工夫していたということです。
季節感よりも便利さが先行している現代人にとって、自分のカラダに合わせて食べる江戸の食養生は学ぶことが多いと思います。


江戸の人々は何を食べていたの?

江戸の食事は、米を主食とし、魚や野菜、豆腐や味噌などの大豆製品を多く食べていました。現代のように卵や肉が身近な食品ではありませんでした。
例えば、ゆで卵1個の値段はいくらくらいだと思いますか?

なんと、約400円!庶民にとっては、気軽に食べられるものではありませんでした。
また、肉は「薬喰い(くすりぐい)」といって、元気をつけたいときに少量食べるものでした。

食糧事情は江戸時代と現代とでは大きく違っていますが、
・主食:ごはん
・味噌汁
・おかず①:魚や豆製品(味噌汁に含めてもOK)
・おかず②:近くで採れた季節の野菜
 (漬けものや煮ものなど。味噌汁に含めてもOK)

このような食べ方は、今も昔も大きく変わっていません。
健康的な和食スタイルとしてこれからも長く引き継いでいかなければならないと思います。


江戸っ子は、大盛りごはんを食べていても太らなかった!

あなたはご飯が好きですか?

江戸の人々はとにかくご飯が好きでした。1日に約450600gの米を1人で食べていたと言うから驚きです。これは、現代の日本人の平均的な摂取量の約2倍!!
そんなに食べて大丈夫?と思われるかもしれませんが、江戸の人々は、現代人よりも太りにくかったと言われています。

 

そこには、生活習慣と食べ方の違いがあります。

まず、生活習慣として、日常生活の運動量が多かったことが挙げられます。
歩く、走る、運ぶ、掘る、掃除するなど、不便な生活だからこそ、日常の動作がかなり多く、筋肉なども使う機会が増えました。

江戸の人々は、しっかりご飯を食べて、しっかり動くから、筋肉質だったそうです。筋肉が多いと、基礎代謝が高くなり、太りにくくなります。
便利な生活ができる現代においては、意識的に筋肉を鍛えるようにしないと筋肉を保ちにくいのが現状です。
筋トレが習慣にない方でこれからダイエットのための運動をしようと思われた方は、1回1分のもも上げ運動など、簡単なことから始めてみてはいかがでしょうか。

 

次に、食べ方として、冷や飯を食べる習慣があったことが挙げられます。

米を炊くのも大変な作業なので、基本的に1日1回だけ温かいご飯を食べて、あとは冷めたご飯を食べる習慣が定着していました。
冷や飯は、含まれるでんぷんが食物繊維のような働きをするために温かいご飯に比べて、血糖値の上昇や食欲を抑制する効果があります。また、腸内で脂肪の蓄積を防ぎ、エネルギー消費を高める働きがある物質を作り出してくれます。
ダイエットにはぴったりです。
さらに、腸内環境を改善する働きがありますので、免疫力が高まり、病気にかかりにくくなる効果も期待できます。

これらの恩恵を現代に活かすには、炊飯できたら、炊飯器に入れたままにしないで水分を飛ばすことがポイントです。
あれば、おひつに移すのがベスト。おひつがない場合には、器などに移してふきんをかけて置くと水分が飛びます。
すぐに食べられるように、「おにぎらず」や「おにぎり」にしておくのも良いですね。

冷ご飯の美味しく食べる方法

おにぎらず

具を挟んで食べるので、栄養価も満足感もアップします。具は好きなものをたっぷりと挟んで、カラフルに仕上げると食べる時も楽しくなります。

味噌焼きおにぎり

ご飯を温かいうちにおにぎりにして、味噌を薄く塗っておきます。そうするとごはんが硬くなりません。
食べる時に、じっくりと焼くと香ばしさが加わりより美味しくなります。
応用編として、味噌に刻んだねぎやごまを加えるとさらに風味がアップします。また、焼きおにぎりにお茶を注いでお茶漬け風にするのもいいですね。

 
 

ご飯の食べ過ぎ注意!江戸患いが教えてくれたこと

江戸の人々はご飯が大好きとお話ししましたが、いいことばかりではありませんでした。
白米を食べるようになってからは、脚気(かっけ)という病気が流行り、「江戸患い(わずらい)」と言われました。

脚気は、次のような症状が見られます。

□ イライラ
□ 倦怠感
□ 食欲の低下
□ 手や足の先に痛みやしびれ
□ 筋力の衰え
□ 歩行が不自由

重症化すると、
□ 心拍数の増加
□ 手足のむくみ
□ 胸水
□ 心不全

脚気の原因は、ビタミンB1の不足です。

米を精白すると、ビタミンB1は8分の1に減ってしまいます。これが江戸煩いの原因でした。
そこで、精白する際に出るぬかを利用して、漬物として食べるようにしました。
きゅうりの場合、ぬか漬けにすると、ビタミンB1は9倍に増えます。
ぬか漬けによって、江戸煩いは納まりました。江戸の人々の知恵には本当に驚きます。

大豆製品にもビタミンB1は多く含まれますので、白米に味噌汁、納豆、漬物という組み合わせはとても理にかなった組み合わせになります。

ビタミンB1は、ダイエットにも欠かせないビタミンです。
特に、イライラしやすく、それほど動いているわけではないけど疲れやすい、気力がなくて、カラダに力が入らない、それほど多く食べているわけではないのに太りやすいなどの自覚がある方は、ビタミンB1不足かもしれません。
健康的な和食スタイルでビタミンB1をしっかりとりましょう。ビタミンB1不足を強化してしまう甘い物やアルコールは控えめに。

このように、江戸の食養生には、健康やダイエットに役立つ知恵がたくさんあります。
あなたも、江戸の食養生を参考にして、ご飯を上手に食べて楽しみましょう。

このコラムが、あなたの健康やダイエットに役立てば嬉しいです。

 

この記事の執筆者

鳴嶋 廣美(なるしま ひろみ)

パナケアヘルス
管理栄養士・食生活アドバイザー・カウンセラー

日本の“食”で健幸を全力応援!
発酵食や野菜を中心とした食事を通して、自然治癒力を高める食べ方や暮らし方を提案しています。
【執筆者HP】パナケアヘルス なるしまひろみ