更新日:2026/05/18
年度替わりの入退社手続きが一旦落ち着いた後、ゴールデンウイーク明けや夏季賞与後も従業員の退職が増える時期と言われています。
雇用保険に加入していた従業員が退職すると、会社は、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することに加え、希望者には「雇用保険被保険者離職証明書」(以下「離職票」という)を作成し、提出する必要があります。「離職票」は、失業等給付の基礎となる賃金額や日数を証明する他、離職理由の判定を受けるために作成するものです。
電子申請が主流となりつつありますが、書面で手続きをする場合、「離職票」の用紙は3枚複写となっています。1枚目は事業主控え、2枚目はハローワーク提出用、3枚目が退職者交付用です。
失業等給付の受給のためには、原則として、離職の日以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間が必要です。ただし、倒産・解雇等による離職の場合(特定受給資格者)、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由による離職の場合(特定理由離職者)は、離職の日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があれば要件を満たすことになっています。
すぐに転職する等の理由で失業等給付の受給を予定しておらず、退職者本人からの請求が無い場合は「離職票」の作成を行わない場合がありますが、在職期間が短い場合であっても、請求があれば作成しなくてはなりません。
失業等給付(基本手当)とは、労働者が離職し自らの能力と適性に応じた仕事に就こうとする際、その離職期間中の生活の安定を図るために支給される給付金です。「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境等)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」にある方をサポートする制度ですので、退職して失業等給付を受給しようとする場合、ハローワークへの求職の申込みと再就職に向けての求職活動を行うこととなります。
求職の申込みを行った退職者は受給資格の決定を受けますが、すぐに支給が始まるものではなく、離職理由等に応じた一定の期間を要します。
ハローワークに離職票を提出し、求職の申込みを行った日から起算して、最初の7日間を「待期期間」と呼びます。これは失業の状態にあることを確認するための期間であり、離職理由を問わず一律に適用されます。
待期期間満了後、支給が開始される時期を左右するのが「給付制限期間」です。この有無は離職票(離職証明書)に記載された「離職理由」を基にハローワークが判定します。
基本手当の給付日数は、離職理由、年齢、被保険者であった期間等によって決まります。これを所定給付日数といいます。特定受給資格者や一部の特定理由離職者に対しては、被保険者であった期間に応じ、基本手当の給付日数が通常よりも手厚く設定されています。
2025年4月1日の雇用保険法改正により、給付制限期間の設定に大きな変化が生じました。
元々、給付制限期間は安易な離職を抑制するため、正当な理由のない自己都合退職へのペナルティとしての側面を持つものでした。改正により、給付制限期間は「早期の再就職」を促すための柔軟な設計へと変化しています。転職のハードルを下げ、失業中も安心して転職活動が行えるよう、原則としてこれまでよりも給付制限期間が短くなりました。
正当な理由のない自己都合退職の場合です。給付制限期間は従来3ヶ月とされており、2020年10月改正により2ヶ月に短縮されました。更に2025年4月改正により、それまでの2ヶ月から「1ヶ月」となりました。この短縮は労働者の円滑な労働移動を支援するためのものですが、事務担当者にとっては、離職票発行の遅延が支給開始日に与える影響が大きくなったことを意味します。手続きのわずかな遅れであっても、退職者が受ける給付の支給開始を遅らせるリスクがあることを認識しておきましょう。
直近5年間において正当な理由のない自己都合退職による受給手続きを既に2回行っている場合、また、懲戒解雇による離職の場合は、短縮措置の対象外となり、従来通り3ヶ月の制限が適用されます。
離職期間中や離職日前1年以内に「教育訓練給付制度」の対象講座等を受講する場合は、自己都合であっても給付制限期間を解除する特例があります。本人が学び直し(リスキリング)を計画している場合は、この特例の存在を案内することで、前向きな再就職支援が可能となります。
これまで、離職票は会社が印刷して退職者に郵送することが通常でした。2025年1月から離職票の受け渡し方法の一つとして「マイナポータルを通じた直接交付」が開始され、徐々に利用が増加しています。ハローワークが発行する離職票データを、会社の電子申請に基づき、退職者のマイナポータルへ直接届ける仕組みです。
離職票の直接交付は、会社が雇用保険資格の喪失手続きを行った際、以下の条件が揃っている場合に行われます。
離職票をマイナポータルで受け取りたい場合、退職(予定)者は雇用保険における自身のマイナンバー登録状況を事前に確認する必要があります。
マイナンバーの登録は、マイナポータル「わたしの情報」の雇用保険情報で確認します。最新の情報として現職と被保険者番号が表示された場合、マイナンバーが登録されています。
<ご参考>
被保険者の皆さまへ:2025年1月から、「離職票」をマイナポータルで受け取れるようになります!(出典:厚生労働省 被保険者向けリーフレット)
離職票(離職証明書)の作成にあたっては、その交付形態(電子または紙)を問わず、事業主はあらかじめ離職理由や賃金内容について本人に示し、内容の確認を得る必要があります。これは離職票(離職証明書)の記載内容の正確性を担保し、後の紛争を防ぐためにも重要です。
直接交付が行われるかは本人の設定状況に依存するため、制度の存在を周知し、本人の希望やマイナンバーカードの保有状況に合わせて「電子」または「紙」の交付方法を案内してください。
直接交付が行われた場合、本人は自身のマイナポータルから離職票データを取得します。本人はそのデータをハローワークへの出頭時に提示・提出することで、受給手続きを行うことになります。紙の離職票を待つ時間がなくなるため、再就職支援が迅速化されるメリットがあります。
離職票が退職者本人に直接送付された場合には、事業所へは離職証明書(事業主控)のみが送付され、離職票は送付されません。また、退職者本人のマイナポータルに離職票が送付されている場合には、離職票に記載されている離職区分コードは個人情報に該当するため、事業所に通知されない点には注意が必要です。
2028年10月には、雇用のセーフティネット確保の観点から、雇用保険の加入要件が現在の週所定労働時間「20時間以上」から「10時間以上」へと拡大されます。雇用保険の加入対象者が増加することは間違いありません。同時に、今後のデジタル化の進展により定型的な事務手続き等の負担は軽減されていくことも想定されます。
退職者実務においては、トラブル防止の観点からも退職者本人への事前案内といった丁寧な対応が重要です。これらの徹底こそが円滑な退職処理と企業の労務コンプライアンスの維持に繋がります。
事務担当者は日々の業務に追われることが多いですが、個々人の働き方や生計維持の在り方が多様化する中、雇用保険制度も頻繁に改正されていますので、知識のブラッシュアップは意識的に行っていきたいですね。
「高志会」は、意欲と熱い気持ちを持った社会保険労務士の集まりです。メンバー全員が能力と収入をアップさせて、令和の時代を勝ち抜いていきます。「できる(社会保険労務士業務・コンサルティング)」は当然として、「しゃべれる(講座 ・ 講演)」、「書ける(本や雑誌の原稿)」の3拍子そろった社会保険労務士を目指して日夜、スキルアップに励んでいます。

金光社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー
大学卒業後、財団法人や一般企業の総務人事を経て2012年に社会保険労務士試験に合格し、2013年に開業登録。手続全般、給与計算、就業規則策定等に幅広く関与し、中小企業の経営者と人事労務担当者のいつでも聞ける相談先として日々の業務に取り組んでいる。
共著「労働・社会保険の書式・手続 完全マニュアル」(日本法令)
【事務所HP】https://www.kanamitsu-sr.com/

東社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー
東京都社会保険労務士会千代田統括支部副支部長
日本経済新聞、ビジネストピックス(みずほ総研)、労働・社会保険完全マニュアル(日本法令共著)、月刊ビジネスガイド、ビジネスアスキー 他 執筆・講演多数。
【事務所HP】https://azumasr.jimdofree.com/