デジタル疲れは「土」で放電する

~初めての大豆づくりと、手仕事がくれる静かな再起動

更新日:2026/08/04

最後に「土の匂い」を感じたのは、いつだったでしょう。

モニターの光に照らされ、絶え間ない通知の波をさばき続ける日々。
デジタルの最前線で常に思考を巡らせている皆さんに、今日は少しだけ、時計の針がゆっくりと進む世界のお話を届けたいと思います。

hlt26080201_img01


私は普段、無農薬の国産大豆を使った味噌づくりのワークショップを主宰しています。

地方と都会の二拠点生活を送るようになってから、地域の農家さんとの温かい接点が少しずつ増えてきました。そんなある日、親しくしている方から「近所の農家さんからもらったから」と、大豆のおすそわけをいただきました。

普段は当たり前のように買っていた大豆ですが、手渡されたその豆を見たとき、ふと畑の存在がぐっと身近に感じられました。手のひらに乗せた大豆を眺めているうちに、「これ、自分でも育てられるのでは?」という思いが自然と湧き上がってきたのです。

もちろん、農業を本格的にするつもりはありません。ただ、好奇心の赴くまま、「試しに、空いている畑を貸してもらえませんか? 大豆を育ててみたいんです」とお願いしてみたところ、快く受け入れてもらい、今回の大豆づくりが実現しました。

大豆の育て方をネット情報と地元の農家さんの助言を頼りに、まずは「やってみる」。地方と関わる暮らしの特権とも言えるのが、この“始めやすさ”です。お借りした小さな畑の賃料は、デザート付きのランチ一回分ほどでした。

hlt26080201_img02
実際にお借りしている畑 (となりはさつまいも畑)


道具も最小限にとどめました。
草刈りから土寄せまでこなせる鎌、畑用の靴、顔をすっぽり覆う帽子、そして腕を守るアームカバー。たったこれだけです。

梅雨明けが迫る7月中旬、「普通に食べられる青大豆」をまきました。実はこのギリギリのタイミングも、農家さんの助言によるもの。空模様を読み、風の匂いを感じながら判断する、農家さんならではの独特の勘と経験のおかげです。

畑を耕すことはせず、肥料も入れず、20cm間隔で大豆を2粒ずつ。種まき機を借りたので作業はラクラクでしたが、もし機械がなくても、等間隔に穴を開けて土をかぶせるだけで十分です。その上に、鳥よけとなるいただいた稲わらをふんわりとかぶせました。         
するとその日の午後、まるで合図のように恵みの雨が降ったのです。翌々日には小さな芽が顔を出し、さらに翌日には力強く背を伸ばしていました。肥料も除草剤も、消毒もなし。どこまで育つかは実験ですが、気づけば天気予報をこまめにチェックし、「雨、降らないかな」と空を見上げるのが私の日課になっていました。

hlt26080201_img03


自然のままに育てば、当然ながら雑草も生えてきます。
その中に「スベリヒユ」を見つけました。

抗酸化作用が高く、オメガ3脂肪酸も豊富に含む“夏のスーパーフード”です。
さっと茹でて水にさらし、おひたしにすると、心地よい酸味とぬめりがクセになります。

hlt26080201_img04


一般的には厄介者として抜かれてしまう草も、視点を変えれば立派な食材。思いがけない自然からの恵みを、ありがたくいただきます。

畑での作業を通してハッとさせられたのは、自分自身の心身の変化です。
街中の暑さは息苦しいのに、畑で流す汗はなぜか「いい汗」に感じられます。畑に行った日は、夜になると自然とまぶたが重くなり、深く質の良い眠りに落ちていくのです。

IT企業で働く方や、常に重要な判断を迫られる経営陣の方々は、日々見えない緊張を抱えている方も多いかもしれません。土に触れることは「アーシング」と呼ばれ、体内の不要な電気を大地に逃がす役割があると言われています。まさに、蓄積したデジタル疲労を大地へと“放電”している感覚なのかもしれません。
もちろん、自然を相手にする生業としての本格的な農業は、天候に左右される大変な仕事です。でも、プレッシャーを手放し、「楽しみのため」「健康のため」に育てる作物は、最高のリフレッシュになります。

たくさん収穫できなくてもいい。「育てる喜び」や「うまくいくかな」というドキドキ感そのものが報酬です。
10月頃にはカラカラに枯れた状態で大豆を収穫する予定です。無事に収穫できたら、その豆で自家製味噌を仕込もうと楽しみにしています。

効率化が極限まで進む現代だからこそ、日常に「手仕事」を取り入れることは、生活の質を静かに、そして確かに底上げしてくれます。実体のあるものに触れ、ゼロから何かを生み出せるという事実は、心に強い安心感と自信を与えてくれるものです。

もし「ちょっとやってみたいな」と思ったら、週末の収穫体験やベランダのプランターから始めるのも素敵です。

hlt26080201_img05


日常の中にほんの少しだけ、「土に触れる時間」や「手仕事」を迎え入れてみませんか。
それはきっと、複雑なデジタル社会を健やかに生き抜くための、心地よい処方箋になるはずです。

秋ごろ、皆様に嬉しい収穫のご報告ができるよう、まずは日々の成長をのんびりと見守っていきたいと思います。

暑い日が続きますが、どうぞお元気で夏をお過ごしくださいね。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

この記事の執筆者
鳴嶋 廣美
鳴嶋 廣美(なるしま ひろみ)

パナケアヘルス
管理栄養士・食生活アドバイザー・カウンセラー
日本の“食”で健幸を全力応援!
発酵食や野菜を中心とした食事を通して、自然治癒力を高める食べ方や暮らし方を提案しています。
【執筆者HP】パナケアヘルス なるしまひろみ