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法人類型に応じた会計基準の適用

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公益法人会計基準自体は、昭和52年3月に制定され、その後も節目において改正されてまいりましたが、平成18年に公益法人制度改革関連三法が成立し、新制度に対応すべく会計基準も整備する必要が生じました。

そこで、平成20年4月に内閣府公益認定等委員会において、改めて公益法人会計基準が新たに制定されました。

この公益法人会計基準は、公益法人会計に関する一般的、標準的な基準を示したものであり、平成20年12月1日以後開始する事業年度から実施されています(以下「平成20年会計基準」)。

公益法人に適用される平成20年会計基準について

平成20年会計基準以前に存在した平成16年会計基準(平成16年10月14日公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せ)と平成20年会計基準との主な違いを説明します。

①事業単位の会計区分

正味財産増減計算書内訳表及び貸借対照表内訳表において、事業区分(公益目的事業を複数実施している場合には、当該最小事業単位ごと)を区分経理して、会計区分を設けることが必要となりました(平成20年会計基準1(2)オ)。

なお、公益目的事業しか行わない公益法人で、「法人会計」区分の作成を省略している法人は、当該内訳表の作成を省略する場合があります(FAQ問Ⅵ-2-⑦)。

さらに、公益認定申請を予定していない一般法人や公益目的支出計画を完了した移行法人の場合にも同様に当該内訳表の作成を省略することができます。

②財産目録

財務諸表の定義に関し、平成16年会計基準では、貸借対照表、正味財産増減計算書、キャッシュ・フロー計算書及び財産目録となっていました。

一方、平成20年会計基準では、貸借対照表(貸借対照表内訳表を含みます。)、正味財産増減計算書(正味財産増減計算書内訳表を含みます。)、キャッシュ・フロー計算書の三表が財務諸表の定義となっており、財産目録は財務諸表の範囲から除かれました。

また、公益法人は財産目録を作成することが求められていますが、移行法人や一般法人では財産目録を作成する必要がなくなりました(平成20年会計基準1(2)イ)。

③附属明細書

平成16年会計基準では規定がありませんでしたが、平成20年会計基準で重要な事項について附属明細書を作成することが義務付けられました。

基本財産及び特定資産の明細、引当金の明細を附属明細書に記載することとなりましたが、これらを財務諸表に対する注記の項目で記載している場合には、その旨を記載し、内容の記載を省略することができることとなりました(平成20年会計基準1(2)ウ)。

④基金

公益法人制度改革関連三法(法律)により、一般社団法人では基金を設定することが可能となりました。また、基金は貸借対照表の正味財産の部に、基金の区分を設け記載することを平成20年会計基準で定められました(平成20年会計基準1(2)エ)。

社団法人・財団法人に適用される会計基準

巷では社団法人(人の集まり)、財団法人(財産の集まり)と耳にすることも多いかと思いますが、実際には公益法人制度改革関連三法(法律)により法人類型も異なります。具体的には公益法人(公益社団・財団法人)、移行法人(公益目的支出計画を履行中の一般社団・財団法人)、公益目的支出計画を完了した一般法人(一般社団・財団法人)、公益認定申請を予定している一般社団・財団法人、公益認定申請を予定していない一般社団・財団法人と、会計基準を考えるうえで法人類型は複数あります。

平成20年会計基準及びその運用指針(法人が会計に関する書類を作成する際に、公益法人会計基準に定めのない事項を運用指針として定めています。)において、会計基準の適用範囲を公益法人としていますが、内閣府公益認定等委員会「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(「以下:FAQ」)問Ⅵ-4-①」によれば、公益法人又は一般法人は、利潤の獲得と分配を目的とする法人ではないことから、通常は、公益法人会計基準を企業会計基準より優先して適用することになります、としています。

これにより平成20年会計基準を選択適用している法人が多いと考えられますが、企業会計基準を選択する場合もあります。例えば、公益認定申請を予定していない新規設立の一般社団・財団法人など行政庁に財務諸表を説明する必要がない法人であって、主たる事業が対価を伴う事業を実施するなど株式会社と同様の事業を行っている法人です。公益法人会計基準ではなく、企業会計基準を選択適用することで事業の実態等をより適切に表していると判断する場合が考えられます(日本公認会計士協会 非営利法人委員会実務指針第38号「公益法人会計基準に関する実務指針」Q1)。

次に、公益法人に適用される平成20年会計基準について説明します。

公益法人会計基準を適用する法人類型と財務諸表等の区分について

法人類型と財務諸表等の関係性を図にいたしますと、次のとおりです(「公益法人会計基準に関する実務指針」Q2)。

法人類型 財務諸表等
公益法人
(公益社団・財団法人)
  • 貸借対照表(貸借対照表内訳表を含みます。)
  • 正味財産増減計算書(正味財産増減計算書内訳表を含みます。)
  • キャッシュ・フロー計算書(認定法第5条第12号の規定により会計監査人を設置しなければならない公益法人以外の法人は作成しないことができます。)
  • 財務諸表に対する注記
  • 附属明細書
  • 財産目録
移行法人
  • 貸借対照表(貸借対照表内訳表を含みます。)
  • 正味財産増減計算書(正味財産増減計算書内訳表を含みます。)
  • 財務諸表に対する注記
  • 附属明細書
一般社団・財団法人
(移行法人を除きます。)
  • 貸借対照表
  • 正味財産増減計算書
  • 財務諸表に対する注記
  • 附属明細書

公益法人の区分はわかりやすいかもしれませんが、移行法人と一般法人については少し複雑となるため、下記においてそれぞれ説明いたします。

移行法人が適用する会計基準

移行法人が適用する会計基準については、運用上、管轄の行政庁へ法律等により必要とされている公益目的支出計画に関する提出書類における区分経理と連動するため、平成20年会計基準の適用が望ましいと考えます。

公益目的支出計画が完了した一般法人が適用する会計基準

公益目的支出計画が完了した一般法人は、行政庁に対する説明責任等はなくなりますが、現に平成20年会計基準を適用している場合、一定期間適用し続けていたことを踏まえ、引き続き適用することについて合理性があると考えられます。

ただし、予算設定など内部管理上に問題がなければ、上述の通り、企業会計基準を選択適用することも可能です。

公益認定申請を予定している一般法人が適用する会計基準

公益法人会計基準の運用指針(内閣府公益認定等委員会)において、公益法人会計基準における公益法人の範囲に、公益認定申請をする一般法人(一般社団・財団法人)を含めていることから、公益認定申請を予定している一般法人は平成20年会計基準を適用することとなります。

まとめ

平成20年会計基準を適用している法人が多いと思いますが、特に公益目的支出計画が完了した一般社団・財団法人や、公益認定申請を考えていない予定していない新規設立の一般社団・財団法人は、法人の実態に合わせ、企業会計基準など公益法人会計基準以外の選択肢があることを今後の運営においてお役立ていただければと存じます。

筆者プロフィール

菊地 義信(きくち よしのぶ)

平成18年12月、辻・本郷税理士法人入社。平成21年10月公益法人部へ異動。公益法人制度改革に従事した後、現在、公益法人の会計、税務、運営相談・公益認定コンサルティングを中心に担当している。

URL:NEXTA(https://nexta-pro.com/)
URL:https://www.ht-tax.or.jp/

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